2021/03/01

〈ホゲットってなんだ?〉第3回

一千年前の人々と、
同じ風景が見られる場所。

<第2回のあらすじ>
山の中にゴロゴロと落ちている作りかけの石鍋や、石鍋を作ったであろうノミの痕跡を発見し、興奮が止まらないHOGETメンバー。こんなに無造作に落ちているモノなの!?と驚きつつ、いよいよクライマックスへ。

まるでアスレチックな、第6工房の降り口。
HOGETメンバー、ワクワクが止まらない。
えいさ、ほいさ、と降りていくと……

●ついに、ホゲット石鍋製作遺跡の中でも最もダイナミックな「第6工房」へ到着。松尾さんが著書の中で、「映画『十戒』の海が割れたシーンのよう」と表す通り、高さ4メートルもの岩壁が両側にそびえ、岩肌には無数のノミの痕跡や、取り残された石鍋を見ることができる。

H (しばし、無言で遺跡に見入るメンバー)こ、これは……圧巻の風景ですね。こんなに大規模に石鍋製作を行っていたなんて、本当に一大産地だったんですね。
 何十人なんて単位ではない、何百、何千という人が石鍋づくりに従事していたのではないかと思います。そして、作り方や形に統一感があるので、胴元(元締め)のような組織が仕切っていたのだろうと思われますが、確かなことはわかりません。当時、石鍋の交換レートは「牛一頭=石鍋四つ」、現在の価値で20万円くらいと、大変高価でした。しかも、全国の石鍋の9割9分が西彼杵半島のシェア、もう独占企業です(笑)。量も質も、西彼杵半島ほど滑石を産出できる地域がなかったんですね。
H 途中で削るのをやめてしまっているものがあるのは、どうしてでしょう? せっかくここまで削ったのに!

ここまで綺麗に削ったのに、どうして!?

 それは多分、今削っている場所より奥の石が、もう滑石の層じゃなくなっているんだと思います。昔の人は賢くて、小さな穴を掘って、現在の「ボーリング」のようなことをして、どこまでが滑石の層なのか調べたりもしていたようです。ほかにも、途中で欠けたり、なにかハプニングがあって、製作を中断したんでしょうね(笑)。

表面は滑石でも、奥の層が違う石質だったのだろう、と推測。

H こうやってノミの痕跡や、作りかけの石鍋を見ていると、なんだかここで石鍋を作っていた昔の人たちと会話しているみたいです……(じ〜ん)。

 そうなんです!私たちの世代って、子どもの頃から、普通に山遊びをしていたんですよね、秘密基地を作ったり。だから、山の風景って見慣れているはずなんですけど、ここの風景は“異風景”じゃないですか。これって、一千年前の人たちと、同じものを見ているんですよ。
こんな遺跡って、ほかにないと思うんです。たとえば「吉野ヶ里遺跡」もすごいけど、実際に残っているのは柱の穴の跡とかで、建物は復元されたもの。でも、この場所は、一千年前から時が止まっていて、タイムスリップできるんですよ。一千年前の人たちと、同じものを見て、もしかしたら同じ匂いを感じて、同じ想いになれるかもしれない……そんな唯一の場所だと思っているんです。私の発掘の一番の目的はそれで、昔の人が何を感じ、考えていたかを単純に“知りたい”。ここにはその感動があります。

H その感動を味わってもらうには、やっぱりここに来て、見て、ふれて、感じてもらうのが一番ですね。私たちも、石鍋やホゲット遺跡の魅力を発信していきます!

松尾さん、ありがとうございました!

<最終回へ続きます!>