● 2年ほど前から、西海町横瀬郷の寄船(よりふね)という地域に、「とんでもなくやばい(※ほめています)キャンプ場がある」というウワサは聞いていたのです。しかし、何がどうやばいのかわからず、もっぱらソロキャンの私はずっと尻込み……が、とうとう行ってきました。〈サンタフェ・オートキャンプ場〉。HOGETから車で約15分。目と鼻の先に佐世保港が見える西海市の北端部に、その穴場キャンプスポットはありました。
行けばわかるさ、やばさの正体……ということで、所々に立つ看板を頼りに向かうと、一瞬でソレとわかる異様な存在感「これか」。周囲は畑ばかりの田舎の風景のなかに、突如として御殿のような洋風(?)巨大建造物が現れるのです。
しかし、ロケーションはウワサ通り抜群、広々としたキャンプ場は手入れの行き届いた芝生のフィールドで、目の前は海! 最高です。が、パッと後ろを振り返ると、この建物がドーン。
困惑していると、オーナーらしき人物が「さいかいスマイルワゴン(市運営の乗合ワゴン)」に乗って、現れました。「あんた、ひとり? どっからきた? 女の人のソロ、多いね……」
オーナーであるおんじやんの名は、ツクモさん。「九十九」と書いて、ツクモさん。なかなかシビれるお名前です。
ツクモさん 「(キャンプ場は)始めて2年もならんから。ここはもともと、馬飼ってたの、馬が亡くなったからキャンプ場したの。馬は25年と3ヶ月生きた……カリフォルニアから、いや、Californiaから来たのよ……」
筆者 「(突然のヒストリートークに戸惑いつつ)え、どっ、どういうことですか? ここで馬ば飼っとったとですか?」
ツクモさん 「そう。馬飼って、乗馬クラブしてたの」
筆者 「エーッ、すごい、それは趣味で? お仕事?」
ツクモさん 「California…California……(遠い目)。趣味サ」
筆者 「(笑)。お仕事は別にしよったとですか?」
ツクモさん 「仕事は建築。この建物もさ……三十何年かかってまだ未完成よ……。結婚できるワケないよこんな人(笑)。独りよ。……あんた、おいの娘になるか?」
● 会って5分と経たぬうちに、娘になるかと持ちかけられる筆者。ツクモさんは終始この調子で、正直なところ、どこまでが本当で本気なのかもよくわからない(笑)。けれど、建物は確かに存在するし、芝は綺麗に刈られていて、敷地の周りもきっちり整備されている。そして、禁断の(?)館の中へ通されて、ツクモさんのキレキレのセンスに、再び驚くことに。
筆者 「ツ、ツクモさん! めっちゃくちゃかっこいいじゃないですか! 家具もインテリアも、馬具とかブーツとか、置いてあるもの、全部かっこいい! これ、自分で集めたんですか?」
ツクモさん 「そう、全部本物のアンティークよ。若い頃に向こうで買ったり、もらったりね。馬がいた頃は社交場だったの。アメリカ人とかいっぱい来てたんよ。建築はサンタフェ風ね」
カーッ! ここは本当に西海か? それにしても、見れば見るほど光る、ツクモさんの美意識。窓の木枠の彫り込み、洒落た建具、トイレは白いタイルに紺色の便器を合わせて、なんてのも素敵。このセンス、ツクモさんが若い頃にわかってくれる方、なかなかいなかったのでは?
ツクモさん 「まあ、変人と思われとったやろうねぇ……」
● ところでツクモさん、「おいはキャンプせん。興味ない」とのこと。なんと。しかし、「カウボーイ文化とアウトドアは、切っても切り離せんものよ」と、続ける。そういえば、挽いたコーヒー豆を直接カップに入れて煮出すコーヒーを「カウボーイ・コーヒー」って呼ぶこと、教えてもらったことがあったなァ。よし、次のキャンプでは、ツクモさんにカウボーイ・コーヒーを振る舞おう! と心に決める、筆者なのでした。
●サンタフェ・オートキャンプ場・・・体調がすぐれない時もあるツクモさん、「たくさん来られ過ぎると対応できないかも」とご心配の様子だったので、住所・連絡先の掲載は控えます。行ってみたい方は、ネットで検索すると情報が出ますが、電話に出られない時もあるそうです。どうぞ、やさしい気持ちで遊びに行ってください。
<設備> トイレ・シャワー(有料)あり、電源あり、薪販売あり ※料金は直接おたずねください。